この記事は約6分で読めます。 Show 2022年2月13日(日)、第111回看護師国家試験が実施されました。 第111回試験の出題傾向や特徴は?第111回試験を分析した髙栁先生によれば、出題傾向に大きな変化はみられなかったものの、社会情勢の変化に沿った問題が多くなったということです。その社会情勢の変化について、看護基礎教育検討会報告書には次のように書かれています。少し長くなりますが引用します。 少子高齢化が一層進む中で、地域医療構想の実現や地域包括ケアシステム構築の推進に向け、人口及び疾病構造の変化に応じた適切な医療提供体制の整備が必要である。また、医療・介護分野においても、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)等の情報通信技術(ICT)の導入が急速に進んできている。 ※厚生労働省「看護基礎教育検討会報告書」(令和元年10月15日)より引用 看護師国家試験の問題は医療に関わる社会情勢の変化も考慮してつくられていますし、その変化をキャッチすることは看護師になってからも必要な姿勢です。常に社会の動きに対してアンテナを張っておくことを忘れないでください。 それでは、より具体的な出題傾向と特徴を、実際の問題に即してみていきましょう。 【特徴1】五肢択二問題が大幅減一般問題における五肢択二問題の出題数が、前回試験より8問も少なくなっていました(全体の出題数としては43問→35問)。より正確な知識が求められる五肢問題の減少に注目すれば、第110回試験より難易度が少し下がったといえます。 【特徴2】暗記問題を抑えて思考問題が増加第103回試験から思考問題(知識の丸暗記ではなく、知識をもとにした思考が求められる問題)が増加傾向になり、それは今回に至るまで続いています。知識をただ丸暗記するのではなく、複数の知識を結び付けて理解し、実践につなげる力が強く求められているのです。いくつか例を挙げて解説します。 午前 問題:脳の外側面を左右から見た模式図を示す。 この問題では、(1)通常、右利きの人の99%は左側が優位半球である、(2)ブローカ野は前頭葉に位置するという2つの知識が頭の中で即座に結び付かなければ正解を導き出すことができません。また、図の左右を勘違いしてしまうと、やはり正解に至りません。多くの問題では図中に左右が明記されていますが、基本的に解剖図などは患者さんと向き合った状態での向き(自分とは反対)であることに留意しましょう。 午前 問題:Aさん(30歳、初産婦)はX年2月5日に妊婦健康診査のために来院した。X年2月のカレンダーにAさんの受診日と分娩予定日を示す。看護師は、医師からAさんの母子健康手帳に受診時の妊娠週数と日数を記入するよう依頼された。 この問題を迅速かつ正確に解くためには、(1)分娩予定日は40週0日である、(2)妊娠日数は0~6日でカウントするという2つの基礎知識が必要となります。これらが理解できていれば、当然のごとくカレンダー上で正解を読み取れることでしょう。ところが、「分娩予定日は280日である」と丸暗記しているだけでは、数え間違いや単純な計算ミスで正解を逃す可能性が高くなってしまいます。1つの数字や言葉を記憶して満足することなく、分娩予定日に関しては「280日=40週0日」、糖尿病診断に関しては「グリコヘモグロビン=HbA1c」などのように、横断的な知識の蓄え方をしておくことが重要です。 午後 問題:上位運動ニューロン徴候および下位運動ニューロン徴候の有無について表に示す。筋萎縮性側索硬化症(ALS)において正しいのはどれか。 この問題では、(1)中枢側の運動神経を上位運動ニューロン、末梢側の運動神経を下位運動ニューロンと呼ぶ、(2)運動ニューロン徴候がある=運動ニューロンが障害されている、(3)ALSでは中枢・末梢いずれの運動ニューロンも障害されるという3つの知識が結び付いて初めて正解にたどり着けます。医療用語の意味や言い換え、さらには疾患に対する理解が複合的に問われた良問であるといえるでしょう。 なお、これらの例題を含め、別紙を参照するタイプではなく、問題や選択肢そのものに図や表が織り込まれた「図説問題」の増加も第111回試験の特徴の一つです。 第111回のボーダーラインはどうだった?第111回試験の受験者数は6万5025人(うち新卒者5万9148人)で、合格率は91.3%(うち新卒者は96.5%)でした。合格率は近年、90%±2%程度で推移しており、第110回試験の90.4%からは微増となっています。合格ボーダーラインは以下の通りです。 必修問題及び一般問題を1問1点、状況設定問題を1問2点とし、次の(1)~(2)の全てを満たす者を合格とする。 (1)必修問題…40点以上/50点 ただし、一部の問題において採点対象から除外された受験者にあっては、必修問題の得点について、40点以上/49点、39点以上/48点とする。 (2)一般問題/状況設定問題…167点以上/250点 なお、第111回試験では、必修問題において採点除外等の取り扱いをした問題が4問ありました。 ・問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため=午前問題1、午後問題7 ・複数の正解があるため=午前問題6 第111回 看護師国家試験 合格状況
過去5年の看護師国家試験合格率推移※参照:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表」 病院情報を探しに行く 第112回看護師国家試験に向けて国試勉強を始める前に、そもそも「看護師国家試験」ってどんなものなのか具体的に知りたい!そんなギモンにお答えします!
試験実施日は?看護師国家試験は例年、2月中旬の日曜日に実施されています。 第112回看護師国家試験は、令和5(2023)年2月12日(日)に実施されます。 国家試験までの流れは?受験する国家試験が行われる前の年の秋頃に、学校で一括して受験の申し込みをするのが一般的です。例えば、来年(2023年)の第112回看護師国家試験を受験する場合は、今年(2022年)の秋頃申し込む、といった流れです。 試験会場は?看護師国家試験の試験会場は11の指定都道府県に設営されます。 合格者の発表日は?第112回は2023年3月24日(金)午後2時に発表予定です。こちらも第112回の詳細は厚生労働省:試験・資格情報をご覧ください。 当日の流れは?当日は、必修問題(全50問)・一般問題(全130問)・状況設定問題(全60問)の全240問を、午前問題と午後問題に分けて次のような時間のスケジュールで行います。 ※どの問題が必修問題に該当するかの公表はなし。問題の難易度から弊社推定による。 出題基準は?厚生労働省が発表する「看護師国家試験出題基準」に基づいて出題されます。出題基準は4年に1度改定され、令和5年版看護師国家試験出題基準が今年発表されました。 出題形式は?4肢択一、5肢択一、5肢択二、直接数字を解答する形式があります。問題の題材として、カラー写真やイラスト、表が用いられることもあります。解答はマークシートに記入します。 問題の種類は?①必修問題看護師として基本的かつ重要な事項に関する問題で、合格基準は50点中40点以上(=絶対基準)。これをクリアしないと一般・状況設定問題でいくら高得点をとっても不合格になってしまいます! ②一般問題・状況設定問題一般問題とは、1問1点の問題です。 ※一般・状況設定問題の合格基準(ボーダーライン)は毎年変動。例年60~70%の間で推移しており、第111回看護師国試では66.8%となりました。 看護師国家試験で出題される全240問(計300点)の割合は次のようになります。 看護師国家試験の合格状況とボーダーラインの推移第111回国家試験の合格率とボーダーラインは?
※1:但し、必修問題の一部を採点除外された受験者は、40点以上/49点、39点以上/48点。
第102回以降の合格率とボーダーラインは?第102回以降の合格基準点(一般・状況設定問題)第102回以降の合格率国試のイメージはつきましたか? 第111回看護師国家試験 統計 いつの?統計問題は、出題の2年前(またはそれよりも前)のデータから出題される傾向にあります。 第111回の受験生は、令和元年および平成31年(2019年)のデータを中心に確認しておきましょう。
看護師国家試験 出題基準 改定 何年ごと?看護師国家試験の出題基準は、社会情勢の変化や看護師の役割、法律の変化によって、定期的に改定が行われます。 改定のスパンは決まっていませんが、4〜5年に一度行われるのが一般的で、2022年の前は2018年に改定されました。
看護国家試験の基準値は?必修問題のボーダーラインは「80%以上」と定められています。 必修問題は全部で50問、1問1点の50点満点なので、40点以上を取っていればOKということになります。 この80%以上という基準は、毎年変更されることはありません。
111回看護師国家試験 何人受けた?第111回看護師国家試験は、2月13日に行われ、出願者数6万5,684人、受験者数6万5,025人、合格者数5万9,344人で、合格率は91.3%。 このうち、新卒者の合格者数は5万7,057人で、合格率は96.5%だった。
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